令和2年度 入学式式辞
校長 原田 豊
本来であれば4月7日に行うはずの入学式でしたが、新型コロナウイルス対策のための緊急事態宣言の発令が予想され、入学式の延期を決定いたしました。私たちとしては、新入生と学校で対面した上で、この新しい人生の門出をお祝いしたいと思い、一縷の望みを繋いで本日に延期したわけですが、やはり環境は厳しく、こうしてオンラインによるちょっと寂しい入学式になってしまいました、本当に残念でたまりません。が、しかし今、こうして直接担任の先生から呼名された中学211名・高校297名、併せて508名の優秀な入学生のみなさんを、この東京都市大学等々力中学校・高等学校に迎えることができたことは、この上ない喜びであります。新入生のみなさん、そして保護者の皆様、改めて東京都市大学等々力中学校・高等学校への入学、おめでとうございます。私たち教職員はみなさんの入学を心から歓迎し、私から一言、教職員を代表してお祝いの言葉を申し上げます。
本校は、平成10年(2010年)に校名変更に続き共学校として再出発をいたしました。ちょうどまる10年が経過しました。この間、都市大等々力は独創的な学習支援システムや他に例を見ない実験中心の理科教育に豊富な英語・国際教育プログラム、あるいは、時代を先取するICT教育やアクティブラーニングなど、常に新しいことに挑戦し、確実に消化してきました。そして今、その成果が一つひとつ現れ始め、近年では多くの取り組みが社会的に高く評価されています。特に、手厚い進路指導と飛躍目覚ましい進学実績は、本校のさまざまな取り組みが教員の熱心な指導と結びついた結果であると、大いに自負しています。
近年、大学入試改革や教育内容の改編など、教育の世界も大きな変化を迎えているところでありますが、どうか本校が誇る熱い先生と質の高いシステムが生み出す教育効果を、つまりは、この10年間の実績を信頼していただき、ついてきてほしい、私はまずこのことを申し上げたいと思います。
一方で私たち都市大等々力は変化して止まない現代社会の只中にあって、大事なもの本質的なことをしっかり見定めていきたいと考える学校であります。そして、その大事なもの本質的なことを見定める「尺度」「基準」とは、私たちの学校が掲げるnoblesse obligeの精神ということにあります。
今、世界は未曾有の混乱、新型コロナウイルスの脅威にさらされています。しかし、その混乱の最前線で不眠不休で患者さんのために戦ってくださっている医師や看護師の皆さんがいます。マスクや防護服も完全な形で行き届いているわけではないと聞きます。常に自らの感染のリスクと対峙しながら、勇敢にも自分を犠牲にしてまで世のため人のために戦っている彼ら医療従事者のみなさんの姿こそ、noblesse obligeの姿そのものです。この姿こそ都市大等々力中高が追い求めている教育の理念であることをぜひ心にとどめておいてください。
しかし、考えてみれば人のために戦っているのは医療に携わる人たちばかりではありません。混乱した社会の中で一定の秩序を回復させようと努めている行政府の人々も、不足する医療器具の制作に取り組む民間企業も、戦っています。否みなさんの中にも実はいるはずなのです。
それはこういうことです。学校が休みになってラッキーだとはしゃぐ人はさすがに今はいないでしょうが、3月2日から始まった最初の休校が決まった時には何人かの人はいたように思います。今は今度は逆に自粛に疲れたと言って少々不平をこぼす人がいるかもしれません。私に言わせればそれはどちらも根は同じところから発する言動だと思います。でも、そういう自分だけのことしか考えない意識から、自分の自粛が感染者数の減少につながり、ひいてはこの混乱を少しでも早く終息させるために大事な行為なのだと考えられるようになったとしたらどうでしょう。その途端、その人もまたお医者さんやお役所の人や社会貢献に踏み出す民間企業の人々同様、新型コロナと闘う人であり、noblesse obligeの実践者ということなのだと思います。
私たち都市大等々力はそういうふうに全体のために意識を変えることを大事にしたいし、全体を考えて行動できる人を育てたい、と思っています。それが本校のnoblesse obligeの教育であり、みなさんはそういう学校に入学したということを理解してほしいと思っています。
さらにもう一つ、コロナの問題に絡めてお話したいことがあります。
私たちは今、100年に一度経験するかしないかといった、パンデミックの只中にています。この混乱の同時代人として、私たちの社会がこの新型コロナとどう向き合っていたかということ、より具体的に言えば、どれほど恐怖しどれほど混乱したか、どれほど失敗しどれほどエゴをむき出しにしたか、あるいはどれほど献身的でありどれほど協力的であったなどなど、しっかりと記憶にとどめておくべきです。そして、そういう混乱の中で自分が何を感じどう思ったかについても書き留めておくとよいでしょう。そういう社会意識や自己確認が、将来のみなさんの生き方・進路意識というものになにがしかの影響を必ず与えることになると、私は考えます。
本校の創立者である「五島慶太」という人は、どんな時でも「なあにこれしきのこと、負けてたまるか」と考えて前向きに努力することを忘れなかった人です。この五島先生の「なあに」の精神を、みなさんも見習って、コロナなんかに負けずこれから始まる新しい人生を、明るく楽しく前向きに頑張りましょう。私たち教職員も、負けずに頑張ろうとするみなさんのために、学校生活が明るく、楽しく、そして、この3年間、あるいは6年間が大きな価値を持った時間となるように精一杯サポートをしていくことをお約束します。
早く、みなさんが学校に登校して、みなさんと学校でお会いできる日が来ることを心から楽しみにしています。
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